ファーストフード・ネイション2008年02月27日 00時17分36秒

2008/02/25(月) 【ユーロスペース:渋谷】

東京では小さな単館のレイトショーでしか観ることができない。

ベストセラー・ノンフィクションの映画化とうたうだけあって、ファーストフード業界の現実に忠実に迫っている。

ハンバーガーチェーンのパティ(ハンバーガの具)がどのように製造されているかを、かなりリアルに映している。
先日紹介した『いのちの食べかた』よりも牛の解体工程を詳しく映像化していていることは特筆したい。
作業現場の過酷な労働環境がとてもよくわかる。

簡単にいえばマクドナルドなどの大手ファーストフード企業の批判。
消費者が知ることのできない裏側を垣間見ることができる作品。

危険度の高い工程はメキシコからの不法移民が支えており、祖国ではとても得られない収入の魅力により、危険を承知で働いている。
やがてメキシカンは高収入の代償として、大きな怪我をしてしまう。(映画では脚の切断)

怪我の原因の多くは製造ラインのスピードが早いからだ。

ラインのスピードは商品の価格とリンクしている。
これは作業者の安全と消費者の購入価格を天秤に掛けて決められる。

かくいう私もかつて自動車メーカーの製造ラインで働いた。
日本の自動車業界がとても好調な時期で、1本の製造ラインで1日の生産台数が1,000台を超えていた。

製造ノルマの達成が危ういときは、何者かがラインのスピードを上げていた。
作業者にはなんら知らされることなく。

パティの製造以外でも店舗の調理過程やスタッフの待遇などのシーンもある。
演出も入っているが、現実に起きていることを基に造られており、業界の暴露映画といってもいいだろう。

この映画を観てファーストフードのスタッフを恨んではいけない。
彼らの大多数は本社の用意するマニュアルに沿って運営しているだけで、製造過程のカラクリは知らされていない。
マネジメントの極少数の人間が企業存続・繁栄のために選択したカラクリは、企業のトップシークレットだ。

この映画がシネコンなどで上映されたら、大手ハンバーガーチェーンのイメージに大きく影響が出るだろう。

しかし、人は便利さと低価格の魅力に逆らえないもの。
市場が安全よりも価格を優先するマーケティングデータを大手企業は熟知している。
昨今騒がれている中国産の農薬入りギョウザも、喉もと過ぎれば安さに釣られて顧客は戻るだろう。

日本は完全にファーストフードチェーンのシステムに組み込まれている。
子供は『オモチャ』を欲しがり親は『安価』に釣られてハッピーセットを買う。
化学調味料のスペシャルレシピ(これまたトップシークレット)で美味しい風味で美味しく感じるハンバーガー。
幼少の頃から常食化してしまう。

『食』という侵略戦争で、日本はアメリカに支配されてしまった。

ファーストフードは既に日本の侵略を終え、未開の地で次ぎの網を仕掛けている。

http://www.fastfoodnation.net/introduction.shtml

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